2016.09.07
2016年9月13日に久留米大学バイオ統計センター公開セミナーを開催します。
バイオ統計センター公開セミナー
場所:久留米大学バイオ統計センター 講義室
講演者:野村 一暢(久留米大学バイオ統計センター)
演題:「観察研究における交絡調整に関する研究 -Estimation of the average causal effect via multiple propensity score stratification-」
概要: 暴露要因のランダム化割り付けが行われていない観察研究では、因果効果の推定に際して交絡因子の適切な調整が必要となる。このような状況への対応として、Rosenbaum and Rubin (1983)は傾向スコアによる交絡因子の調整法を提案しており、本手法は疫学研究等で広く用いられている。傾向スコアを用いた調整法の一つとして層別化手法が提案されている。現実的に各被験者の傾向スコアは不明である事から、ロジスティック回帰等の当てはめにより推定した上で層を決定するが、モデルの特定を誤った場合には効果推定にバイアスが生じ得る (Drake 1993)ことから、モデル選択が適用の際の大きな問題点となる。しかしながら、傾向スコアのモデル選択法に決定版がないのが現状と考えられる。 本研究では傾向スコア層別化手法による平均因果効果推定において、複数の傾向スコアのモデルの候補からモデル選択を行うのではなく、それらを同時に用いた解析手法について提案する。具体的には、各被験者に対して複数の傾向スコアのモデル候補を考え、クラスタリング手法を用いて層(クラスター)の形成による層別化手法を実施する。クラスタリングによる層形成により、各層内においては傾向スコアの全候補モデルの近似と共に、いずれかの傾向スコアのモデリングが正しい場合においては、層別推定量が平均因果効果の良い推定量を与えることが期待できる。 数値実験により、候補のモデルの中に真のモデルが含まれる場合には、提案法は交絡によるバイアスを除去し、意図通りの挙動を示すと共に、傾向スコアの推定モデルの誤特定や解析対象集団への逸脱症例(outlier)の混入下においても、頑健な方法であることが認められた。 本セミナーでは傾向スコアを用いた各手法の特徴、提案法が有する特徴と検討結果と共に、傾向スコアを用いた層別化手法の近年の研究報告を含め、現提案法の性能向上に向けた課題についても紹介を行う。
引用文献
Rosenbaum, P.R. Rubin, D.B. (1983). The central role of the propensity score in observational studies for causal effects. Biometrilka, 70, 41-55.
Drake, C. (1993). Effects of Misspecification of the Propensity Score on Estimators of Treatment Effect. Biometrics, 49 , 1231-1236.
日時:2016年9月13日(木)15:00-17:00
場所:久留米大学バイオ統計センター 講義室
講演者:野村 一暢(久留米大学バイオ統計センター)
演題:「観察研究における交絡調整に関する研究 -Estimation of the average causal effect via multiple propensity score stratification-」
概要: 暴露要因のランダム化割り付けが行われていない観察研究では、因果効果の推定に際して交絡因子の適切な調整が必要となる。このような状況への対応として、Rosenbaum and Rubin (1983)は傾向スコアによる交絡因子の調整法を提案しており、本手法は疫学研究等で広く用いられている。傾向スコアを用いた調整法の一つとして層別化手法が提案されている。現実的に各被験者の傾向スコアは不明である事から、ロジスティック回帰等の当てはめにより推定した上で層を決定するが、モデルの特定を誤った場合には効果推定にバイアスが生じ得る (Drake 1993)ことから、モデル選択が適用の際の大きな問題点となる。しかしながら、傾向スコアのモデル選択法に決定版がないのが現状と考えられる。 本研究では傾向スコア層別化手法による平均因果効果推定において、複数の傾向スコアのモデルの候補からモデル選択を行うのではなく、それらを同時に用いた解析手法について提案する。具体的には、各被験者に対して複数の傾向スコアのモデル候補を考え、クラスタリング手法を用いて層(クラスター)の形成による層別化手法を実施する。クラスタリングによる層形成により、各層内においては傾向スコアの全候補モデルの近似と共に、いずれかの傾向スコアのモデリングが正しい場合においては、層別推定量が平均因果効果の良い推定量を与えることが期待できる。 数値実験により、候補のモデルの中に真のモデルが含まれる場合には、提案法は交絡によるバイアスを除去し、意図通りの挙動を示すと共に、傾向スコアの推定モデルの誤特定や解析対象集団への逸脱症例(outlier)の混入下においても、頑健な方法であることが認められた。 本セミナーでは傾向スコアを用いた各手法の特徴、提案法が有する特徴と検討結果と共に、傾向スコアを用いた層別化手法の近年の研究報告を含め、現提案法の性能向上に向けた課題についても紹介を行う。
引用文献
Rosenbaum, P.R. Rubin, D.B. (1983). The central role of the propensity score in observational studies for causal effects. Biometrilka, 70, 41-55.
Drake, C. (1993). Effects of Misspecification of the Propensity Score on Estimators of Treatment Effect. Biometrics, 49 , 1231-1236.