2014.12.01
2014年12月11日に久留米大学バイオ統計センター公開セミナーを開催しました。
バイオ統計センター公開セミナー
日時:2014年12月11日(木)16:00-17:00 場所:バイオ統計センター 講義室 講演者:野間 久史 (統計数理研究所 データ科学研究系) 演題:「疾患の分子診断法開発における効率的な臨床研究デザインと
セミパラメトリック統計理論」 概要:近年の分子生物学・ゲノム科学の飛躍的な発展を受け,疾患の分子的特性を利用
した個別化医療(personalized medicine)の実現に向けた研究が,臨床医学研究に
おいても活発に推進されている.個別化医療によって,治療の有効性・安全性をよ
り正確に予測することが可能になれば,患者個人における確かな治療を行うことが
可能となり,さまざまな側面からの多大な便益が期待される. これらの研究における重要な研究手法のひとつとして,近年,マイクロアレイ技術
などを利用した,ゲノムワイドレベルでの疾患関連遺伝子の探索が広く行われてお
り,これによる疾患の分子レベルでの情報を利用した診断法(分子診断法;
molecular diagnosis)の研究が広く行われている.これらの研究では,1実験あた
りの実験コストが,数十万円にも及び,一般的な臨床研究の規模(数百以上のオー
ダー)の対象者のサンプルに対して実験を行うには,膨大なコストがかかる. しかしながら,分子診断法の開発における臨床アウトカム(生存時間など)と関連
する遺伝子を検出するための統計解析では,サンプルサイズを大きくとり,膨大な
コストをかけたとしても,必ずしも推定精度・検出力の改善につながるとは限ら
ない.例えば,生存時間解析による方法では,推定精度・検出力に貢献するの
は,基本的にはイベントを起こした対象者のみであり,打ち切りを起こした対象者
に費やされる実験コストは,分子診断法の開発には貢献しない. 本講演では,これらの研究における膨大な実験コストの節減のための効率的な臨床
研究デザインについて議論し,そのもとで,数万規模の大規模な多重推測を行うた
めの統計的諸問題について述べる. また,新たに検討を行ったセミパラメトリック有効な統計手法を紹介する.